元・ワイキューブ社長の安田佳生さんの本です。
ワイキューブは人材コンサルタントの会社で、倒産前には中小企業向けのCI(コーポレート・アイデンティティ)や企業ブランディング支援なども行っていた会社です。
ワイキューブがユニークなのは、優秀な人材を確保するために特徴的な福利厚生や破格な給与待遇を行ったことです。
福利厚生として、社内にワインセラーや豪華なバー、おしゃれなカフェ、さらには洋服店(自社ブランド「Y-style」)を設置したりしていました。
また、社員の平均年収を1,000万円にしようと考え、400万円だった平均給与を770~780万円まで引き上げたり。
「優秀な人材さえ集まれば、売上は伸びる」という持論を持っていた安田さんでしたが、2007年5月期の売上約46億1400万円をピークに、2011年3月30日に負債約40億円を抱えて倒産します。
独特な取り組みで就職人気企業ランキングにランクインすることもあり、新卒の優秀な人材を確保しましたが、高給・好待遇を与えたにもかかわらず売上は伸びませんでした。
というのもを、給与が高いことで傲慢になってしまったり、「給与が高いからもういいや」と守りに入ってしまう人が多かったみたいです。そして、給与が下がった途端に、多くの人が辞めてしまいました。
売上が上がらず、人件費を銀行借り入れでまかなっていため、その後リーマンショックを経て、倒産に至ります。
本書は売上がピークに達する少し前、倒産するより6年ほど前に書かれたものです。
安田さん(@yasuda_yoshio)のツイッターは気づきが多く、安田さんの思考に触れたかったので本書を手に取りました。
どんな本?
千円札が落ちていたら拾うか?
安田さんは千円札は拾わないほうがいいとおっしゃています。
というのも、千円札と一万円札が落ちていて、どちらか一方しか拾ってはいけない場合だったとして、多くの人は一万円札を拾わずに千円札を拾っている。
「目の前のことや自分の常識にとらわれて、視野が狭かったり視点が低くなってしまっている」といったことに対して、安田さんのユニークな視点で書かれいる本です。
勤勉は悪、努力は報われない
「頑張る」というのは一見大変そうではあるけれども、実際はそれほど苦しいことではありません。
なぜかと言うと、人一倍頑張ったり残業したりすることは、今の延長線上でできることだから。
けれども、頑張って人の2倍の仕事ができたとしても限界がありますし、頑張っているのでいつかは力尽きてしまいます。
「勤勉は美徳、努力は必ず報われる」といった思考が根底にあるため、長時間労働などで頑張ってしまうわけです。
バブルの前までは、作ったら売れるといった状態だったので、労働時間を長くすればそれが成果として反映されましたが、今はビジネスの流れが変わっています。
安田さんが仰っているのは、「勤勉は大事だし、努力は報われる」けれども、その言葉の定義が大事ということ。
勤勉とは何か?努力するとはどういうことか?この定義が今と昔で変わっているということです。
安田さんは次のように定義しています。
今は、人と違う結果を出すためにはどうすればいいのかについて、新しいやり方を考え、実行することが「勤勉」であり、最も短い時間で成果を出すための工夫をすることが「努力」である。
変化し続けることがが「勤勉」であり、より短時間で大きな成果を生む別の方法を考えて実行することが「努力」というわけです。
変化値は捨てられる量の違いで決まる
生きていて全く変わらない人はいませんが、大切なのはどれだけ変わることができるかということ。
自分はこういった人間であると頑なに決めて変わらない人もいれば、必要とあれば地位や価値観を惜しげもなく捨ててしまって駆け上がっていく人もいます。
「伝統」や「文化」は大事ですが、「本質」と「トレンド」を見極めることが大切。
例えば、江戸時代では「ちょんまげ」や「刀」が武士の魂のように言われていましたが、今ではそう言う人はいません。
武士の本質はそういったところにあるわけではなく、「ちょんまげ」や「刀」はトレンドであったわけです。
本質は「潔い生き様」や「武士道」といった倫理観なわけですね。
「本質」を大切にしながら変化知続けることが大事です。
値切りは半額に、値上げは3倍に
一割二割の値引きを要求するのではなく、半額ぐらい値切ることが大切。
そうしたほうが相手にとっても結果的にハッピーになるから。
なぜかと言うと、一見して不可能に思えることも頭をフル回転させることで解決策が見つかるもの。
一割二割の値引きは頑張ればできますが、半額となると利益が出ません。生産方法や考えを根本的に変える必要があります。
この変化によって、相手も生産性が上がるといった発想になります。
値上げも一割二割の値上げだと、そんなに大きな付加価値を付けられません。お客さんからも不満が出てきそうです。
しかし3倍となると商品そのものを変える必要が出てくるので、結果として非常に質の高い商品を出すことができます。
まとめ
常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう
引用:アインシュタイン
本書の中で何度か安田さんが引用されている言葉です。
常識は常識なだけになかなか疑うことをせず、常識の中でモノゴトを判断したり実行してしまいがちです。
それはそれでいいのですが、大きな成果を出そうとした場合は大きく発想を変える必要があります。
それは、常識を疑うことであったり、今までのやり方を大きく変えることであったり。
そういった視点の切り替えの考え方が詰まった本で気づきがとても多かったです。
以上、書評でしたっ