人は誰でもされて嬉しいのが褒められること。
叱るよりも褒めたほうが人は育つという研究成果もあるほど。
褒めて伸ばすのか、叱り倒して厳しく育てるのか分かれるところですが、やっぱり褒められたいですよね。
誰だって叱られれば嫌な気持ちになりまし、もし叱ったことで「なにくそ!」と発憤してくれればいいのですが、やる気を失ってしまう人もいます。
今回は褒める効果と褒め方のコツについてです。
目次
褒める効果
ロサダライン
職場をポジティブな雰囲気にするために「2.901:1」という数字があります。
これはビジネスチームに成功をもたらすためには「メンバー間のポジティブな相互作用とネガティブな相互作用の比率」が、最低でも「2.901:1」でならなければならないというものです。
つまり職場における一つのネガティブな行動を打ち消すのに、最低でも三倍のポジティブな行動をぶつける必要があるというもの。
これは心理学者でありビジネスコンサルタントでもあるマルシャル・ロサダが発見した数字で、「ロサダライン」または「3:1の法則」と呼ばれています。
このラインを下回ると、チームの仕事ぶりは急速に落ち込みます。
3:1というのはあくまで最低ラインで、調査結果によると6:1くらいが理想だそうです。
叱ることも時には必要ですが、それ以上の割合で褒めることが重要。
叱るよりも3倍以上褒めることでポジティブな雰囲気が生まれます。
褒めることは人を幸せにすること
叱るよりも褒める割合を増やすと、ポジティブな人間関係を築けるわけですが、そもそもどうして褒めるかということです。
あらゆる仕事や人間関係は、何らかの形で誰かを幸せにするために行います。
だからこそ「人を幸せにする」という意識を持つメンバーで仕事に取り組めば、自然と仕事は良い方向に進んでいきます。
人を幸せにする方法の一つとして「褒める」という行動があるのではないでしょうか。
褒めることは相手の自己肯定感を高める
褒めるということは何も技術的なことではありません。
「いいな!」と思うことを「いいな!」と表現することです。
相手に対して「いいなぁ」と思うことを、言葉と態度で表現すると、相手は自分を肯定的に受け止めることができるようになります。
そうすると、どんどん自信がついて、自分を好きになり、自己肯定感が高まっていくことに。
自己肯定感が高まると、自分の判断やあり方を心から信じ、失敗を恐れず障害を乗り越えることができるようになります。
褒めるときは本音で褒める
褒めるための嘘は言わない
褒め方にはコツがあります。
けれども大切なのは本音で褒めるということ。思っていもいないことで褒めないということ。
機嫌を取ったりするために褒めるとバレたときに逆効果ですし、そもそも言葉に気持ちが乗らないので上滑りしてしまって伝わりません。
自分が思っていることを「褒める」という形で表現することが大切なわけです。
日頃の当たり前に感謝の気持ちを
人を褒めるとき、褒める褒めないの基準はどこに設定されているのでしょうか?
人は無意識で相手に期待するラインを設けています。
「このぐらいはやって当たり前」というライン。
そのラインを越えた場合に褒めるという行為が発生し、そのラインを下回ると不平不満を持ちます。
例えば、奥さんが毎日料理を作ってくれる。それが当たり前ラインだとしたら、ご馳走を作ってくれると褒めて、料理を作ることをサボると不満を持つといった具合です。
もちろん、期待を上回ったときに褒めたり感謝したりするのはいいのですが、大切なのは当たり前であることにも感謝するということ。
「ありがとう」の反対は「当たり前」
当たり前と思っているのは感謝の気持ちが薄れている証拠。
けれども奥さんが料理を作ってくれるのは当たり前ではないですし、世の中の当たり前と思っていることも本当は当たり前ではなく、当たり前と思っていることは感謝の気持ちが欠けているということでもあります。
当たり前を褒めるということは、存在を肯定するということ。
そこにいることを承認することです。そして、承認されるということは心を豊かにします。
良いところやこだわりポイントを見つけて褒めることは大事ですが、それに加えて当たり前だと思っているところも褒めたり感謝したりすることが豊かな人間関係を築く上で大切です。
褒め方のコツ
褒めることに意味がある
それではどうやって褒めるかについてです。
極論すると、褒め方はどのようであっても問題ありません。
まずは「褒める」か「褒めない」かの二択です。
「褒める」ことは簡単なようで実は意外とできていません。
心のなかで「すごいなぁ」と思っていても、照れくさくて結局言えてないことってないですか?
言葉にして伝えないと意味がありません。
褒められて嬉しくない人はいないので、考えすぎて褒めらていないのは勿体無いですよね。
人間関係の深さと褒める深さ
普段からあまり褒めていなくて、褒めるのが苦手だな~っていう人はどこから褒めていいのかわからないかもしれません。
人を褒めるには「浅い褒め方」と「深い褒め方」とがあります。
浅い褒め方といのは、アクセサリーや髪型などの外面を褒めることで、深い褒め方というのは、性格や経験などの内面を褒めるといったものです。
まだお互いの人間関係が浅い場合は浅い褒め方を、深く人間関係を築けている場合は浅い褒め方から深い褒め方まですることができます。
例えば、初対面で人間関係が浅いのに「あなたのどんな逆境にも負けずに諦めずにやり遂げる姿勢を尊敬する!!!!!」と褒めても、「いやいや初対面やん。俺の何を知ってるの!?」と思われるのがオチですよね。
深い褒め方は人間関係が深いからこそ相手に伝わります。
まずは褒めやすいところから褒める
褒める場合はまずは浅い褒め方からです。
アクセサリーや洋服、髪型などの外見を褒めてみましょう。
ポイントとしては、相手がこだわっているところを褒めることです。
こだわっているポイントというのは、人とは違うところ。違和感を感じるところです。
例えば、メガネが白縁とかだと目立って違和感を感じますよね。
ネクタイやカバンや時計なども違和感を感じたとしたら、それは相手がこだわりを持っている可能性が高いです。
「その時計素敵ですね!」と褒めてみて、相手がこだわりを持っていたら「そうなんですよ!実はこの時計って○△□」といったように相手が率先して話し出します。
こだわっていることを褒められたら当然嬉しいですよね。
そして、褒めるときに大事なことは、思ってもいないのに褒めること。
素敵だと思っていないのに「それすごく素敵ですね!!」といった嘘で褒めるのはNGです。
嘘で褒めて相手に嘘だとバレると、相手からすると全然嬉しくないですし、誠実ではないですよね。
嘘をついていると声のトーンも下がるので、大体嘘だとバレています。
褒めるフレーズにもバリエーションを持たせる
いざ褒めるとなると、フレーズにも工夫したいところ。
褒めるのに慣れてないと、いつも同じフレーズを使ってしまいがちです。
「頑張ったね~!」「やるじゃん!」「すごいよ!」
そういったフレーズでもいいのですが、バリエーションを持たせたほうが褒められる方の感じ方も変わってきます。
ここでは10個のフレーズをご紹介します。
これ以外でも、相手に響くフレーズはいくらでもあると思うので、ぜひ探してみてください。
- センスがあるね
- あなたのおかげです
- よくなったね
- これ、大変だったんじゃない?
- あなたがいてくれて、本当によかった
- わかっていても、なかなかできないですよ
- 嬉しいです
- あなたといると、元気になるよ
- いい感じだね
- 今までで一番いいんじゃない
あくまでテクニックですが、伝わりやすく配慮することも相手への感謝と心配りです。
good+whyでやる気を引き出す
褒めるのに加えて、ちょっとしたことを付け足すだけで、相手のやる気を引き出すことができます。
その付け足す内容はというと、褒めたあとに、成功原因を質問することです。
例えば、「今までで一番いいよ!何か工夫したの?」
一方的に褒めてもいいのですが、相手も試行錯誤して成果を出しているので、本当はその頑張りを話したいものなんですね。
けれども、日本人は積極的にアピールすることを美徳と思っていないので、自分から率先して話したりはしません。
話したいのに、話せないという、もどかしい状態です。
褒めるときに、その成功原因を質問してあげると自由に話すことができますし、自己肯定感も高まります。
また、成功した原因をアウトプットすることで再現性が高まり、仕事のパフォーマンスも向上します。
効果的な方法なので、ぜひ試してみてください。
褒めるときはオーバーに
海外の人は、身振り手振りも使って大げさなぐらいに感情を表現しますよね。
それに比べて日本人は感情を表に出すのがヘタな人が多いです。
無表情で声に抑揚がないまま褒めても、意味がないどころかちょっと怖い印象すら与えてしまいます。
「そんなに大げさに褒めたらわざとらしい」と思う人もいるかもしれませんが、大げさなぐらいが丁度いいものです。
アメリカで面白いデータがあって、「人にしてもらった親切な行動」と「人にしてあげた親切な行動」をどれだけの割合で覚えているかという調査が行われました。
人は「してもらったこと」よりも「してあげたこと」を35倍多く覚えている。
出典:ゆうメンタルクリニック
同じ行動を取ったとしても、自分が行った場合は他人が行った場合に比べて35倍も大きく評価するということです。
褒められると人は嬉しいですが、自分が思っているよりも大げさに褒めるぐらいが丁度いいわけです。
褒めることをマネージメントする
人を褒めるのってどんなときでしょうか?
ファインプレーをしたり良い仕事をしたときに褒めると思うのですが、優秀な人ほど周りに求める基準が高くなるので褒める基準も高くなってしまいます。
そのため叱咤激励することはあっても褒めることがあまりないといった事態に…
つまり良いところが見つからないから褒めないといったように、褒めることに対して多くの人は受動的になっているわけですね。
そこでオススメなのが、褒めることを能動的に行うというもの。
いかに褒めるかということを積極的にマネージメントするということです。
褒めることは周囲へのモチベーションや成長に大きく影響するので、褒めることを管理して積極的に行うことはとても大切なわけです。
褒めることをまずは決める
相手に良いところがあったら褒めるという調子だと、なかなか褒める機会を見つけられないことがあります。
なぜかというと、人の欠点や失敗は目につくのですが、褒めるポイントとなるとよっぽど大きなことでない限りはなかなか見つからないものです。
例えば、部下を褒める場合を考えてみましょう。
部下の立場からすると頑張ってチャレンジしてうまくいったことだったとしても、上司からするとできて当たり前のことかもしれません。
そういった場合、ついつい褒めるポイントを見過ごしてしまいがちです。
そうなると、叱ることはあっても褒めることがなくなってしまい、相手のタイプによっては潰れてしまうことも…
なかなか褒めることができない人にオススメなのが、良いところを見つけたら褒めるのではなく、褒めることをまずは決めるということ。
例えば毎日一回は必ず褒めると決めるんですね。
褒めると決めていたら相手の良いところを探そうと意識するようになります。
「部屋を見渡して赤い色のものは?」と意識して部屋を見てみると赤い色をしたアイテムが目に留まるのと同じように、褒めるところを探すと見つかるものです。
もしかしたら普段見落としていたファインプレーを周囲の人は地道に実行しているかもしれません。
まずは褒めるのを決めると、相手がどういったことに頑張っていて、どんなチャレンジをしていて、どんな貢献をしているかを見ていると、褒めるポイントが割と簡単に見えてきます。
褒めるポイントがなければ未来を褒める
ただし職場や部下の中でも、褒めるポイントがなかなか見つからないといった人もいるんじゃないでしょうか?
褒める相手が、新人や職場に慣れてない人などは特にそうですよね。
そういった場合は無理やり褒めるんじゃなくて、自分自身がその人にどういうふうになってほしいのか「期待」をこめて褒めることがコツです。
例えば、仕事が速くなってほしい人には「あなたは絶対に仕事が速くなると思う!」といったように褒めてください。
このようなアプローチは心理学的にも有効です。
ピグマリオン効果
教育心理学における心理的行動の1つで、人間は期待された通りに成果を出す傾向があるというものです。
部下に「仕事が速い!」と言えば本当に仕事が速くなっていきます。
また、ピグマリオン効果には相手のモチベーションを上げる効果もあります。
期待されているモチベーションに加えて、偽りのない期待は、よりその期待に応えたいというモチベーションを引き出すことになります。
バーナム効果
誰にでも当てはまる様な曖昧かつ一般的な内容を「自分に当てはまる!」と捉えてしまう心理現象です。
例えば、
・ある程度幸せな人生を歩みたい。
・まあまあ、我慢強い方だと思う。
・なるべく人から嫌われたくない。
・基本的には社交的だけど、1人の時間も大切にしたい。
・自信が無い方だけど、やるときはやる。
割と自分自身にも当てはまると思いませんか?
それもそのはずで、これらはあなただけではなく多く人に当てはまる内容だからです。
人間は「あなたは○○だ!」と言われれば、なんとなく「そうかな?」と思ってしまう傾向があります。
「仕事が速いよね!」と言われれば、「仕事が速い」と思うようになります。
まとめ
今回は褒める効果と褒め方のコツについてでした。
人は誰でも叱られるよりも褒められたいもの。
そして褒めるというのは「いいな!」と思うことを「いいな!」と表現することです。
「いいな!」と思っていても伝えられていないのは勿体無い。
褒めるのが苦手な人も、まずは声に出して伝えてみるところから始めてみてください。
褒めることで良好な人間関係を作り、相手を幸せにすることができます。